猫の地球儀 焔の章/幽の章

秋山瑞人さんについてはイリヤの空、UFOの夏というなんかわからないけどオタク文化界隈にものすごい影響を与えた作品の作者という認識しかなくて、イリヤの空の読んだこと無いしなんでこの本を手にとったかというと夏への扉を読んだ時に猫とSFってなんかいい具合だし他にも猫とSFの作品はないかなぁと探した時にオススメされたからです。この説明いらない。


何らかの理由で人のいない地球軌道上のステーションで猫とロボット達が暮らしていて、好奇心は猫をも殺すといいますが本当に殺されちゃった猫や死んじゃった猫もいる中で、夢とか生きる理由とか人(猫)との繋がりとかそういうのを考えさせられるのです。作者のあとがきを見ればだいたいどういう意図があるかは書いてあって、結局のところ純粋なものであると思われている夢や好奇心だってどこかで誰かに迷惑をかける自分勝手なこともあるし、というかその為なら他人に迷惑をかけようが何しようが突っ走ってしまえるのが夢なのかなぁ、とか。夢を成し遂げた人がその事実だけで人間くさいところと分かたれて伝記の人物になってしまうことが多いけれど、その人だってマスかいたり人を嫌ったりそういう人間臭さを持っていたのだなぁということは当たり前で。夢と人間臭さの不可分性とか、よくわかんないけどそんなのがひとつのテーマなんじゃないでしょうか。
設定背景がそれほど詳しく明かされることはありませんが、この作者はこういうのが多いのかもしれません。前に読んだ何かの短編でも背景はちゃんと考えられているであろう不思議な世界なのにまったく説明はなされていなかったし、イリヤの空セカイ系云々の本では敢えて世界の説明を少なくしているとか書いてあったし(伝聞を鵜呑みにするとか頭悪いし危険すぎるけど)、でもそれによって想像の余地が残されるという気がしました。設定に凝ると設定をあれこれ語りたがる人は多い(特にSFとか多い気がする)だけに。


なんのかんの足りない頭でそれっぽいことを考えてみたけど、純粋に面白かったんです。ページを繰る手が止まらないというやつです。戦闘の場面での緊張感も、会話での気の砕けた感じも、未知に踏み出すワクワク艦も、本からバンバン伝わってくるのは文章がわかりやすくてとても上手いからなんだろうと思います。すごい。
本当は色々書きたかったけど、時間が空いたしちょっとスラスラとは出てこないからこんな具合になってしまったけど、涙がちょっとこぼれたり、温かい気持ちになったり、こんなドチャクソおもしろい作品に出会えて久しぶりに幸せでした。オススメしてくれた方には全力で感謝を表明しなきゃいけないな。