オナホ男

小説と呼んでもいいのかわからないけれど、一応小説カテゴリに分けておこうと思います。オナホ男とは、ねとぽよ第二号に掲載された作品です。現在、無料で読むことができます。


http://www.netpoyo.jp/event/20120504_2


オナホ男についての話の前に、発信する力がありながら表に出て来なかったような人がねとぽよ等のような場で活動できるようになったのはすごい時代だなぁと思います。ゼロ年代までのインターネットはあくまでアマチュアかのような風潮は、今は昔となってしまいましたね。ニコニコ動画に代表されるように、インターネットとSNSはプロとアマの垣根をぶち壊していくのでしょうなぁ。
そんなに感心するのは、もちろんこのオナホ男の出来が凄まじいからです(ねとぽよは読んでないので他の掲載者の方はよくわかりません、ごめんなさい)。電子書籍の利点を存分に使った紙面作りなどは見事としか言いようがありません。実際に読んでみるとわかると思うのですが、各部に散りばめられた小ネタもひとつひとつ見応えがあります。作者が執筆時期にネタ出しで干からびていたのも納得の力作です。なお、小ネタに関しては本作の出版が5月初頭であることを念頭に置くとより楽しめるかと思います。


作品の内容に踏み込みますと、これはSFなのだと感じました。決して話の構造がそうであるというわけではなく、サイエンスがもたらすその先の世界をまっすぐに描ききっているからです。作中で展開されるトンデモ理論も、そんな馬鹿なと思う反面、きちんとした哲学に基づいて語られているのだとわかります。
また、本作はインターネットリテラシーを教えてくれる側面も持ち合わせています。作中に登場するパロディサイトのすべてを常用している人はほぼ0に等しいと思いますが、インターネットを利用している人ならばどれかひとつは間違いなく利用しているでしょう。もし自分の観測範囲外から情報が発生したとして、どのように伝搬してくるのかを非常にわかりやすい形で表現しています。さすがに作中ではデフォルメされた表現なので丸ごと信じるわけにはいかないですが、どこの住人はどのように情報を解釈して何を目的に発信するのかを概ね知っておくのは非常に有意義なので、これは是非とも”実用的な”ネットリテラシーの教育材料としても読んでいただきたい作品です。


真面目に感想を書いてみたところで、このオナホ男はそれを抜きに読んでも面白いです。実際、物語終盤での某ソフトにインする演出は、こんな発想があるのかと痺れてしまいましたし。まぁ僕個人の率直なファーストインプレッション、
「あぁ、作者のオナホへの愛の集大成、魂の叫びだな…」