セブンスドラゴン2020

セブンスドラゴン2020です。前作のセブンスドラゴン(以下、7ドラ)のファンタジー世界からがらりと趣を変えて、現代の東京に舞台を移した作品となります。前作との直接的なストーリーのつながりはありませんが、それを匂わせるキャラクターや台詞もあるので前作をプレイ済みだと少しニヤリとできるシーンもあるかもしれないです。


まずはシステム周り。7ドラが正統派コマンド式RPGの系譜を継ぎながらもシビアな難易度で好評を博したのに対し、今作7ドラ2020ではガワの部分がファンタジーから現代に変わり、さらにキャラクターデザインを変更したりしたのが一部では不評を買ったようです。確かに7ドラの魅力のひとつといえばあのキャラクターデザイン(さらに言うならばルシェ)もあるのでそれは確かに致し方ないと思いますが、ゲームの出来としては7ドラの反省を十分に生かしたものに仕上がっています。
生かしたというよりは、ゲームの制作方針がやや変わったというところでしょうか。7ドラはシビアな難易度と組み合わせ無限大のジョブとスキルでいくらでもやりこめてしまうゲームでしたが、7ドラ2020では全体的にコンパクトにまとめています。職業は7→5に、PT人数も4→3に。7ドラではクリアだけを目指してもかなり時間のかかるゲームでしたが、7ドラ2020ではストーリーに関するイベントや依頼をすべてこなしても30時間程度でクリアできるようになっています。時間のない現代人のための救済処置、最近は何かしらこれを組み込まないとギブアップされる事態が多発しそうです。難易度もぐっと低くなっていて、普通にやっていればボス戦の不意打ち以外で全滅するような事態は起こり難くなっています。というのも、以下のように大方のユーザーが不満に思っていたであろうシステムが改善されたことが大きいです。
・ダメージ床フロワロの廃止
・HP、マナ回復アイテムの廉価化
・抜け道、セーブポイント、依頼対象、イベント発生ポイントなどがマップ上に表示
される
・依頼で使うアイテムにはそれとわかる説明がつく
・ドラゴンの再復活なし
この改善されたアクの強いシステムこそが7ドラなのだと主張する御仁もいらっしゃるかもしれませんが、それは恋のようなものです。盲目なのです。好きになりすぎると、相手の欠点も魅力に見えてきちゃうアレなのです。フロワロで満身創痍になった身に雑魚戦で全滅したり、回復アイテムが希少だからダンジョン奥地のドラゴンに至るまでに何度も宿屋に引き返しているうちにドラゴンが最復活したり、せっかくの抜け道なのに場所を忘れてしまいしちめんどうくさい道中にイライラしてDSを叩き割りそうになったり、そういうストレスから解放されるのは大方の人々にとっては幸せなことだと思います。まぁだからといって調子こいてると、ドラゴンは本気で殺しにかかってるのでやられちゃったりするんですけどね。


シナリオ。これは王道の中の王道で良かったと思います。脚本を手がけた森橋ビンゴ氏のことはよく知らないのですが、この割と容赦なくキャラクターを退場させる手法は最近の流行りという感じですね。画面上ではデフォルメキャラクターなのでダメージは緩和されてるものの、テキストやほのめかす部分ではかなりエグいことしてます。かなり荒廃した世界であることを考えると強くなければサヴァイブできないのは当然ではありますが、それにしても容赦なくやらかしてくれるので、そこらへん苦手な人は不快に思うかもしれません。僕はそういうキツ目のお話が大好物なので楽しめましたが。
あと、本作の発売日が2011年11月で、思い切ったなー、と。震災の後の自主規制の潮流でまどか☆マギカのワンシーンが避難所を連想させるとして5月まで放送を延期されたりしましたが、そんな連想なんかよりももっと直截的に避難所を描写してよく無事だったなー、と(僕が知らないだけで無事ではなかったのかもしれませんが)。何度も言うように作品から時代背景を読み取るのは野暮だと思っている僕ですが、これは震災があったからこそこのような作品に仕上げたに違いありません。荒廃した世界の復興に前向きな物語は、そういうメッセージが込められているのでしょう。
また、他作品に比べて技術者や研究者の活躍にスポットが当てられて優遇されているのは、小惑星探査機はやぶさの一幕が影響を及ぼしているのかなぁなどと思いました。「主人公に世界が救われるだけなんて勘弁だ、ほんのわずかでもいいから俺達だって何かを成したい」と、それをきちんと見せてくれるいいシナリオだったと思います。


ここまで概ね好評を書いていますが、当然ながら不満もつきまといます。
雑魚戦でドラゴンが乱入してくると雑魚が消えるのぐらいのことはさほど問題にはならないのですが、相手に付与する状態異常の順番の見直しは絶対にするべきでした。たとえば毒を付与する攻撃で敵のHPを0にした場合、まずはなにをもってしても死亡が最優先な状態異常でそこで戦闘が終了するべきなのに、毒を付与したメッセージの後に敵撃破という流れになっていて、わずかずつながらストレスの蓄積になります。デストロイ深度やハッキング弱体化の状態異常は通常攻撃でも頻繁に付与するので、このストレスは縁の下のストレス持ちと化しています。デバックの段階で気が付かなかったのでしょうか。
そしてコンパクトにまとまった弊害。たとえば戦術幅の低下ですが、これはコンパクト化とのトレードオフなので仕方ありません。むしろ、戦術についてはうまい落とし所になっていると思います。どちらかというと、キャラクター作成の幅が狭くなったのは大問題です。組み合わせ的には7ドラが職業7*立ち絵4だったのに対し、7ドラ2020は職業5*立ち絵10*ボイス10くらいで、一見すると幅が広がっているようですが立ち絵もボイスも実質特定職業or特定グラフィック専用な趣があり、かなり限られた編成にならざるを得ません。CVで個性を出す方向性にしても、せめて立ち絵は7ドラ並にしてくれないと満足はできないです。せめてルシェを入れてくれ!現代にルシェなんていねぇとか言われてもしったこっちゃねぇ!!!……刀子ちゃん(CV竹達彩奈)、デストロイ子(CV加藤英美里)、鬱姫チェルシー(CVゆかな)で終始ニヤニヤしながらプレイしていた奴が堂々と言えた話ではないのですがね…。はぁ、鬱姫チェルシーのフィギュアの出来が良さそうだから欲しいなぁ…。はぁ…。
最後に、メディアインストールしないとお話にならないロード時間の長さ。これはどうにかならないのでしょうか。もしメディアインストールをせずにディスクオンリーでプレイする人がいたなら、間違いなくストレスで禿げ上がるでしょう。


先日ベスト版が発売され、2013年春には7ドラ2020-Ⅱの発売が控えています。値段に対しての出来は良いゲームなので、プレイして損はないでしょう。何度も周回プレイしたいかと言われると微妙ですが、RPGは得てしてそういうものですしね。また、BGMをすべて初音ミクに変更できるDIVAモードはなかなか画期的ですので、一聴の価値はあると思います。