第六ポンプ

SF界の新星(らしい)、パオロ・バチガルピ氏の短篇集となります。氏の作品は、話題になったねじまき少女は読んでおりますが、この短篇集も世界観を同じとする作品がいくつか収録されていました。というかあれですね、たぶんねじまき少女で世界観をある程度把握してなかったらちょっともう少し説明くださいってなりましたよねたぶん。理解力と想像力が足りない人間にSF(説明がはしょられる短編ならなおさら)を読む資格はないのかな。悲しいね。サンキューあとがき。


この人の作品、いわゆるブレードランナー的な未来の退廃した側面をピックアップしてることが多くて、ぶっ続けで読んでたらわりと気が滅入りがちになりました。SFって自由でいいと個人的には思うんですが、現実の延長線上にあり得るところとか現代に警鐘を鳴らすとか、そういうところが古き良きSF愛好家の間で高い評価を得ているのかなぁとか思います。適当ですけど。プロフィールをちゃんと見てないですけど、作者さんはきっと生物化学を専攻した人なんじゃないかなぁ、なんか昔取ったなんとかで作風に独特の色付けがされるのもSFのおもしろいところだなぁ。


収録された作品の中でも特に興味を引かれたのは「カロリーマン」「ポップ隊」「第六ポンプ」の3本でした。
「カロリーマン」が収録作の中では一番希望にあふれたお話だと思ったので、ハッピーエンドを好む僕が好むというやつです。あとは、すでに出来上がった巨大な社会の仕組みの前では無力なのをさんざわからされるこの人の作風の中でも、これだけはそれを突き崩せるのではと思わせるのが、日本の漫画やゲームに育てられた僕の何かを刺激しているのかもしれません。無力なだけは悲しいからね。
「ポップ隊」は、そういえば不老不死の技術が完成したらこうなるよねというまったく考えていなかった視点をガツンとぶつけられたのがなかなか刺激的でしたので。不老不死を手に入れて、人類は繁殖の楔から解き放たれるのかなぁ、よくわかんねぇなぁ。想像力の欠如、かなしい。
「第六ポンプ」の、真綿で絞め殺すような人類最後の生き残り劇はなかなかつらいものがありまして、世の中バカばっかりと口癖のように言う人がいますがいざバカばっかりになったらとんでもないことになるよね。関係ないね。なんとなくだけど、作者の今どきの若者に対する失望とか叱咤も含まれている気がした一作。


暗いものが多いですが、非常に面白く読めた作品でした。SF界の新星は伊達じゃない。