故郷から10000光年

SF界の巨匠の短篇集。なのですが、どうにも僕にとって相性がよろしくなかったようです。短篇集なので幾作かは面白いと思ったもの(故郷から10000光年、われらなりに、テラよ、奉るはきみだけ)もあったのですが、根っからの日本語文章で育った僕にとっては読むのが些か大変でありました。海外SFは言語の変換が間に入ってる分読み難いのは常でしょうが、本作は特にそれが顕著であるように感じました。特に会話で誰の台詞なのかわからないことが多かったです。
また、一から十まで文章中で設定を述べるのは野暮ったいとは思うのですが、世界観がよくわからないままフィニッシュされて困惑するというのもあるので、ある程度のSF的な素地と経験値がないと、僕のような日本作家にどっぷりのカジュアル読者ではかなりの苦痛を強いられると思われます。
あー、こんなこと言ってると「最近の若者は〜」とか言われて馬鹿にされるんだろうなぁ。


そうは言いますがしかし、それぞれの話に持たされている示唆とアイデアは非常に面白いです。「われらなりに、テラよ、奉るはきみだけ」では惑星時代における郷愁と愛星心とでも言うべきものが驚きと悲しみとともに綴られており、印象深いものになっています。「故郷から10000光年」では、昨今の時間のみの時間旅行ものとは一線を画す、時間と空間の時間旅行になっており、執筆された年代も鑑みるとさすがとしか言いようがありません。他にもいくつかの短篇は読みやすかったり、必ずしもすべてがお固いわけではなくポップなのも含まれているので、まさにバラエティに富んだ短篇集となっています。
しかし、どうして海外の人は隙あらばセックスをねじ込んでこようとするんでしょうね。最も直接的でわかりやすいのは解るのですが、愛情が高まればすぐにセックスというのは好きじゃないんですよ…。はい、プラトニックな関係を好む乙女な私です。